vol.002
IWY ROUND TABLE TALK 2011.11.22 at NAGOYA
IWY ROUND TABLE TALK 2011.11.22 at NAGOYA

2011年夏、本格的にスタートしたI WANT YOU。パーティでもありプロジェクトでもあるという、複数の側面を持つこの "I WANT YOU" は各地で開催されたオフシュートパーティも含めて、新しいひとつの提案として徐々に受け入れられ浸透しつつありますが、同時にこのプロジェクトはまだまだ始まったばかりでもあります。

"I WANT YOU"というプロジェクトを通して、他の誰でもないわたしたち自身の音楽の未来を切り拓くという、その意図と目的をこれからよりたくさんの人々と共有して行きたいと考えています。

昨年11月、名古屋Club magoでのIWY開催に先立って行われたこのラウンドテーブル・トーク(座談会)は、そのコンセプトをよりわかりやすく外部に向けて知ってもらうべく機会を設けました。


RADIQ aka Yoshihiro HANNO / eater / AOKI takamasa / kohei / tomoho

WRITING : kohei , PHOTO : hisa NISHINO

最初はすげー挑戦的なパーティ名やなと思った(笑)
tomoho まず最初に、このI WANT YOU(以下IWY)というパーティのアイデアが出来上がったきっかけから話してみたいと思うんですが、あらためて半野さんからおおまかに説明してもらえますか?
HANNO うん。このIWYっていうパーティをパーマネントなかたちでやるっていうのは実は最初の段階では考えてなかったのね。 最初は「東京以外の場所、たとえば関西で何かパーティやろうか」って話で、どうしようかなと考えてたときに、まずeaterに相談してみたんだけど、ちょうどその時期にアオキくんがベルリンから日本に帰ってくるってタイミングやって。それで自然な流れでアオキくんにも声かけて、「やってみない?」って。あとDJどうしようかってなって、それでゾノ(kohei)にまず声かけて。 あと関西以外でパーティやるとしたら他にどこがあるやろなって考えたら、名古屋がちょうど候補に挙がったし、それならトモホくんにもDJとして参加してもらおうってことになって、核になるメンバーはスムーズに決まってったね。
それで2011年の夏に京都metroと名古屋magoでまずこのメンバーでIWYとしてパーティをやった。この2日間のパーティをやってみて、見えてきた可能性っていうのが結構あって、そこから本格的に「このプロジェクトをパーマネントなものにしていくためにはどういうコンセプトで何をしようか?」って話し合いをし出したんだよね。
kohei で、IWYというパーティ名というかプロジェクト名に関しては、最初の京都と名古屋のパーティをやる時のメールのやり取りから生まれたんですよね。 それぞれ案を出し合って、そのアイデアの中のひとつとして出てきたのが「I WANT YOU」だった。アブストラクトなものではなくて、なにか明確な感じを打ち出したいって言う共通のイメージはあったし。で、ちょうどその頃philpotやop.discからリリースされてた半野さんの作品から浮かんでくる画っていうのがMarvin Gaye『I Want You』のアルバムジャケットそのままの世界だよねっていう話もしてて。
AOKI 最初はすげー挑戦的なパーティ名やなと思った(笑)。英語圏の人からしたら、けっこう大胆に受け止められるんちゃうかなって。
HANNO うん、かなりセクシャルな意味合いもあるしね。
AOKI あと「I WANT YOU」って、アメリカ軍が昔徴兵のために使ってたコピーと同じでもあるんだけど、こっちは真逆の意味で使ってるというか。彼らは戦争のために市民を集めるんだけど、僕らはパーティのため、音楽を通じてみんなと良い時間を過ごすためにこの言葉を使ってるわけで。それもすごくおもしろいなと思った。
eater これ以上のパーティ名は結局思い浮かばへんかったね(笑)。

アーティスト単体として各都市に行くのではなく、僕ら自身が良いと思うパーティのパッケージごと持って行くべきなんじゃないかと
tomoho 夏に名古屋と京都で最初のIWYをやってみて、見えてきた可能性があったと半野さんはさっきおっしゃってましたが、それは具体的に言うと?
HANNO いままでのパーティのやり方っていうのは、どうしても東京を中心に考えられてきたでしょ。東京とその他の都市・・・って感じで。これまでの僕らも実際にそういう形に乗っかってきていたわけだけど。でも、自分が10数年間そうした”東京とその他の都市”っていう枠組みの中でやってきて、いま現在正直に思うのは、「東京以外の都市から搾取してきたんじゃないか」っていう疑問なの。地方の都市に呼ばれてライブしに行き、そこで実際のお客さんの数に見合わない報酬を貰い・・・俺もそれはそれで仕方ないとなんとなく思っていたんだけど。音楽はどの場所でも勿論ちゃんとやってきたしね。でも、やっぱりそういう「搾取してる」って感じは拭えなくて。この日本という国の中で本当の意味で僕らのやっているような音楽が根付くためには、東京中心のいまの形では駄目なんよ。じゃあどうやって根付かせるかって考えたときに、アーティスト単体として各都市に行くのではなく、僕ら自身が良いと思うパーティのパッケージごといろんな都市に持って行くべきなんじゃないかと思った。そうやって都市と都市のネットワークを僕らが繋げて行くことでしか僕らの音楽は拡散して行くことは出来ないと思ってるしね。そうやって僕らがパーティとしていろんな都市を動いて行くことで、僕ら自身の音楽が未来に生きて行く場所を切り拓けるはずなのよ。次の世代にその場所を引き継いで行くという意味でも。
AOKI 僕自身も半野さんがおっしゃってるように、そういう「搾取してきたんじゃないか」という気持ちは分かります。東京でこれだけのギャラを貰ってるから、地方でもそれ相応の額で・・・っていう暗黙の了解みたいなものがあって、でも地方では一晩に遊びに来るお客さんの数も限られてるわけで。正直心が痛いときもあったし。僕らの音楽をもっと根付かせるためには、もっと長期的な視点に立たなきゃいけないという半野さんの意見には同感です。結局、僕らが何のために音楽やってるのかって言ったら、「楽しい!遊びたい!」っていうのが根本にあるわけで。


並列でミクロ的になりがちなウェブの世界で、IWYのようなポコッと出た山に集まってくれたら
HANNO まあ、今言ったようなことがまず最初のベーシックな部分なんだけど、それを実行していくためにはどうしたらいいか?ってことだよね。ひとつの都市に僕らがパーティを持って行けるのは、多くて年に2回が限界でしょ?そこにはどうしても時間的なブランクが発生するわけで、その空白をパーティとは別の形で埋めて繋ぎ合わせておく必要があると思うのね。そこでウェブサイトがすごく大事になると俺は思っていて。ただ単に告知をする場所ってだけじゃなくて、そこを覗けば何か面白いものが得られるってものにしたい。そこで繋がりを保ちつつ、その集大成として現場のパーティがあるって形に持って行かないと。じゃないと、あまりにもコミュニケーション不足になるんちゃうかな、って。ウェブサイトに関してはヒサちゃんにすごく頑張ってもらってて、迷惑かけてるなと思ってるんだけど(笑)。でもまだまだ発展途上ではあると思ってるし、これから色々とやっていきたいアイデアもあるから。
AOKI 「デモ募集」みたいなのも面白いですよね。そこでホンマにええのやってる人がいたら、IWYでライブしてもらったり。
HANNO そうそう、やっぱり「夢」みたいなものが見れる場所にしたいよね。これから音楽を創って行こうっていう人が僕らのウェブなりパーティを見て、「やろうと思えばこういうやり方もあるんや」ってとこを僕らも示していかなきゃ。「夢を見る」ってホンマ大事なことで、僕ら自身もそういう「夢」がなきゃこんな音楽なんてやってられないんでね。
tomoho まず僕らでパーティをやってみるっていうのは第一のステップで、そこからいろんな人たちを巻き込んで行くのが第二のステップってことですよね。
HANNO そう、いろんな人たちが循環してサイクルを形成していく、ってこと。僕らが音楽でやっている仕事っていうのは、まずライブや作品でみんなに楽しんでもらうってことが一つにあるけど、その他にもこれからの未来、つまり新しいアーティストなり才能を発掘して紹介していくってことも大事な仕事だと思うのね。それもさっき言ってた「循環」ってことに繋がるんやけど。パーティを媒介にしてこうしたサイクルを促して行くことができれば、僕らのやっていることにも意義が生まれると思ってるので。
AOKI 僕も2001年に半野さんのリミックスをやらせていただり、一緒にライブでいろんなところを回らせてもらうことですごく世界が広がったし。
HANNO 僕らが世に出ることができたのも、そういうサイクルのおかげでもあるし。ウェブサイトではデモ音源をちゃんとした形で受け入れて聴かせてもらう体制も整えたいと思ってる。
AOKI いま音楽を作ってる若い子は発表の場が少なすぎる気がしますね。
HANNO 既存のウェブサービスとかで発表しても、あまりに規模がミクロ的で並列だから、わかりにくいっていう現状もあるよね。
kohei そういう並列でミクロ的になりがちなウェブの世界で、IWYのようなポコッと出た山に集まってくれたら。
これまでのやり方ではこのメンバーを地方都市でまとめて呼ぶってことは難しかった
AOKI こないだ僕が福岡のotonohaでライブしに行った時も、めちゃめちゃ格好いいライブする人いましたよ。こういう凄い人がもっと大きな場所でライブしたり、ちゃんとした形で世に出ることができるようになればいいのに、って。そういう人たちも参加してくれると良いですよね。それがシーン全体の活性化にも繋がるわけだし。
tomoho さっき半野さんは「搾取」という、取りようによってはかなり過激な言葉で表現されてましたが、IWYのパーティの提示の仕方は過去のパーティの在り方、つまり「オーガナイザーがいて、ギャラを支払ってゲストを呼ぶ」みたいな形とはまったく違いますよね。僕自身もこれまで名古屋でパーティをやってきたローカルの人間としてはそれがすごく新鮮でありがたいというか、この時点でIWYらしい姿勢がよく出てると思うんですよね。
HANNO これまでのやり方ではこのメンバー(RADIQ、eater、AOKI takamasa)を地方都市でまとめて呼ぶってことは難しかった。通常のギャラで考えるとね。そもそも地方のハコの大きさで言うと、この3人分のギャラをペイ出来るように成立させることは難しかった。もちろん交通費だってあるわけだしね。だから結果的にそれぞれ1人で各地へライブにしていってたわけだけど、それでは僕らが良いと思ってるパーティっていうものを伝えることはなかなか出来ないよね。もちろん自分のライブはめいっぱい頑張るにしてもね。結局、パーティというパッケージで体感・体験してもらうには、こういう出来高制みたいな方法しか考えられないよね。
AOKI 地方に1人でライブしに行って、お客さんが入らなかったってこともあるんですけど、そういう場合って僕らのギャラはオーガナイザーの方が身銭を切って払ってくれたりしてて・・・。
HANNO うん。「果たしてこれで良かったんかな・・・?」って思うことは正直あったよね。


人って楽しいところへ自然と集まってくるもんやから、まず僕らがめいっぱい楽しんでやってるってことを見せたい
tomoho 以前僕のパーティで半野さんとアオキさんをそれぞれ名古屋に呼ばせてもらったときに印象的だったのが、お2人ともパーティが終わったときにその一晩全体の状況をすごくケアされるんですね。アオキさんは特に顕著で「もっと人呼べるように僕も頑張るわー!」って(笑)。
AOKI 僕も普段まわりにパーティやってる人が多かったし、オーガナイザーの気持ちも分かるんですよね。なんか、「人ごとじゃない」っていうか(笑)。僕らが音楽やって行けるのもそういう各地方のオーガナイザーのおかけでもあるし。
HANNO 結局すべて自分に還ってくるというか、僕ら自身の未来のためにやっていることでもあるしね。日本という国の大きさで言えば、僕らの音楽の持っているシェアっていうのはほんの僅かなものでしかない現状がある。それをちゃんとふさわしいシェアにまで広げるためには、継続してやらなきゃいけないことはまだまだあるわけで。
AOKI 人って楽しいところへ自然と集まってくるもんやから、まず僕らがめいっぱい楽しんでやってるってことを見せたい。実際、これまでIWYでやってきたパーティも全部めちゃくちゃ楽しかったし(笑)。
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